Thunderbolt 3の普及度合いと今後

[2016/09/08更新]
現在、Thunderbolt 3がどれくらい普及していて、Thunderbolt 1/2と比べてどうなのかを、調べてみました。参考にしたのは、Intelで公開しているThunderboltの製品リストです。

・Thunderbolt (1/2) Product Showcase (2011/02発行, 2015/09/29付) http://www.intel.pl/content/dam/www/public/us/en/documents/brochures/thunderbolt-product-showcase-brochure.pdf
・Thunderbolt 3 Product Showcase (2015/06発行, 2016/05/31付)
https://thunderbolttechnology.net/sites/default/files/16-171_Thunderbolt3_Brochure_FIN3_HI.pdf


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こうして見ると、Macはまだですが、Thunderbolt 3を搭載したPCがそこそこでていることがわかります。具体的にはノートPCが多いですが、ゲーミングPCやワークステーションなどの高性能の製品に加えて、モバイルPCでの採用が進んでいるのが特徴です。昨今、ノートPCはどんどん薄くなってきていますが、薄くするにはUSB Type-Cを搭載し、それでUSB、DisplayPort、充電をまかないたいというときに、IntelのThunderbolt 3チップであるAlpine Ridgeを使用すると、USBとDisplayPortの機能が実装しやすいということがあるようです。また、現行のCPUであるSkylakeプロセッサーのチップセット部がUSB 3.0 (別名USB 3.1 Gen 1、転送速度5Gbps)までしかサポートしていないので、USB 3.1 (別名USB 3.1 Gen 2、転送速度10Gbps)の機能を提供するのにAlpine Ridgeが使えるということもあります。次のCPU世代であるKabylakeについて、少なくともモバイルPC用のCPUであるKabylake-U/Yでは、Skylakeからチップセット部の変更がないという情報が流れているので、モバイルPCでのThunderbolt 3の採用は進みそうです。デスクトップ用の-S、高性能ノート用の-HのチップセットでUSB 3.1がサポートされるかどうかは、異なる情報が流れており、わかりません。Intelいわく、Kabylakeで新たに120以上の製品が出るとのことで、Windowsでは第1/2世代の製品数を軽く超えそうです。
http://news.mynavi.jp/photo/news/2016/08/30/542/images/025l.jpg


Thunderbolt 3の周辺機器としては、Macに採用されないかぎりは普及しないという予測もありますが、
[COMPUTEX]外付けグラフィックスボックスで脚光を浴びたThunderbolt 3。本格的な普及に必要なのは,Macに採用されること? - 4Gamer.net
現状では、端子の少ないモバイルPC用のドックが目立ちます。自分はHP Elite Thunderbolt 3 65W Dockを使っていますが、たいへん満足しています。
ノートPCの拡張機器 - らどこの消費生活 続き

そして、この先流行するかもしれないのが外付けグラボユニット(と、その応用としてGPU内蔵ディスプレイ)。ASUSではThunderbolt 3と独自の端子で動く外付けグラボユニットを開発中です。
[COMPUTEX]ASUSのエンジニアに聞く「ROG XG Station 2」。Thunderbolt 3+αでつながる外付けグラフィックスボックスの仕組みとは - 4Gamer.net
発売中のRazer Coreは、Thunderbolt 3を搭載したRazerのノートPCに加えて、IntelのNUCの1つSkull Canyonでも動くそうで、その他のメーカーのPCでもUEFIなどを改良すれば使えるようになるとのことです。2016/06/02現在で、Razer CoreをほかのPCで動かそうと試みた動画がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=BOFZGCwoRmo (6:07~)
以下のような結果だったようです。
 ・Dell XPS 13, 15: 動いたが不安定
 ・HP Spectre 13: 全く動かなかった
 ・Dell Alienware 15: この中では最もまともに動いたが、それでも不安定
 ・Acer Predator: 動いたがとても不安定
このほか、海外のブログやフォーラムでは、XPSでの動作報告がちらほらあるようです。Kabylake世代のHP Spectre 13のように見える製品でデモしている写真もあります。
http://news.mynavi.jp/photo/news/2016/08/30/542/images/024l.jpg

Thunderbolt 3の帯域はPCIe Gen 3 x4なので、Gen 2だとx8、Gen1だとx16相当で、↓の実験によると、グラボにとって遅すぎるということはないようです。
GeForce GTX 980 PCI-Express Scaling | techPowerUp
また、特に最新の世代のグラフィックスカードはビデオメモリーの量が多く、いったんデータをビデオメモリーにロードしてしまえばその中で演算が片づくことが多いので、グラボの映像出力端子から外付けディスプレイに出力する場合は、Thunderbolt 3経由によるパフォーマンスの低下は許容できる範囲に収まるかもしれません。グラボでの演算結果をノートPCの内蔵ディスプレイに戻す場合は、さらにパフォーマンスの低下があります。映像出力や充電もThunderbolt 3端子で行うPCでは、映像出力や充電のためにケーブルをつなげるついでに外付けグラボの力も利用できるので、外付けグラボを利用する敷居が低くなります。WiGigに次世代CPU以降でサポートされるかもしれない無線給電を加えた完全ワイヤレス環境よりも、Thunderbolt 3によるケーブル1本接続の環境のほうが、普及するかもしれませんね。